- はじめに — なぜ敬語が重要なのか
- 1. 敬語の3分類 — 核心となる概念の整理
- 2. 敬語レベル別の比較表
- 3. 間違えやすい敬語表現と正しい使い方
- 4. ビジネスの場面別の敬語の使い方
- 5. ビジネスメール作成テンプレート
- 6. 面接での敬語の使い方
- 7. IT業界特有の日本語表現
- 8. クッション言葉 完全ガイド
- 9. 実践練習問題
- 10. ビジネス敬語チェックリスト
- まとめ
- 参考資料 (References)

はじめに — なぜ敬語が重要なのか
日本で働く外国人エンジニアやビジネス従事者が最も難しいと感じるものの一つが、まさに 敬語 である。文法の教材で動詞の変換表を覚えても、実際に会社でメールを書いたり、電話を受けたり、ミーティングで発言したりするときに、どの表現を使えばよいのか分からなくなることが多い。
敬語は単なる文法ではなく、話し手と聞き手、そして話題の人物 のあいだの上下関係をその場で判断し、適切な表現を選ぶ言語行為である。日本のビジネスの現場では、敬語を使いこなす力がそのまま 社会人としての信頼度 に直結する。
この記事では敬語の3分類を体系的に整理し、ビジネスの場面別の実践表現、間違えやすい敬語、メールのテンプレート、面接での対応、IT業界特有の表現までを一通り扱う。
1. 敬語の3分類 — 核心となる概念の整理
日本語の敬語は大きく 三種類 に分類される。文化審議会の分類では5種類に細分化することもあるが、実務ではまず以下の3分類をはっきり区別することが先決である。
1-1. 尊敬語 — 相手の動作を高める
相手や目上の人の動作を表すときに使う。主語は必ず相手 (お客様、上司、取引先など)である。
| 基本形 | 尊敬語 | 例文 |
|---|---|---|
| 言う(いう) | おっしゃる | 部長がおっしゃった通りです。(=部長が言った通りです) |
| 行く / 来る(いく/くる) | いらっしゃる | お客様がいらっしゃいました。(=お客様が来ました) |
| 食べる / 飲む(たべる/のむ) | 召し上がる (めしあがる) | どうぞ召し上がってください。(=どうぞ食べてください) |
| する | なさる | どのようになさいますか。(=どうしますか) |
| 見る(みる) | ご覧になる (ごらんになる) | こちらの資料をご覧ください。(=この資料を見てください) |
| 読む(よむ) | お読みになる | メールはお読みになりましたか。(=メールを読みましたか) |
| 知る(しる) | ご存じ (ごぞんじ) | この件はご存じでしょうか。(=この件を知っていますか) |
| くれる | くださる | ご連絡くださりありがとうございます。(=連絡してくれてありがとう) |
汎用パターン: お + 動詞(ます形)+ になる
お読みになる、お使いになる、お書きになる、お待ちになる
1-2. 謙譲語 — 自分の動作をへりくだる
自分の動作をへりくだることで、相手を間接的に高める。主語は必ず自分 (または自社)である。
| 基本形 | 謙譲語 | 例文 |
|---|---|---|
| 言う(いう) | 申す / 申し上げる | 私から申し上げます。(=私から言います) |
| 行く / 来る(いく/くる) | 参る / 伺う | 明日、御社に伺います。(=明日、そちらの会社に行きます) |
| 食べる / 飲む(たべる/のむ) | いただく | お茶をいただきます。(=お茶を飲みます) |
| する | いたす | 私がいたします。(=私がします) |
| 見る(みる) | 拝見する (はいけんする) | 資料を拝見しました。(=資料を見ました) |
| 聞く(きく) | 伺う / 承る (うけたまわる) | ご意見を伺いたいのですが。(=意見を聞きたいのですが) |
| 知る(しる) | 存じる (ぞんじる) | その件は存じております。(=その件は知っています) |
| もらう | いただく | ご確認いただけますでしょうか。(=確認してもらえますか) |
| 会う(あう) | お目にかかる | お目にかかれて光栄です。(=お会いできてうれしいです) |
汎用パターン: お + 動詞(ます形)+ する / いたす
お送りする、お届けいたす、お伝えする、ご報告いたす
1-3. 丁寧語 — 話し方を丁寧にする
誰に対しても使える基本的な丁寧表現である。文末に です / ます / ございます を付ける。
| 普通体 | 丁寧語 | より丁寧な表現 |
|---|---|---|
| ある(存在する) | あります | ございます |
| いい(良い) | いいです | よろしいです / よろしゅうございます |
| そうだ(同意) | そうです | さようでございます |
| わかった(了解) | わかりました | 承知いたしました / かしこまりました |
| すみません(謝罪) | すみません | 申し訳ございません |
核心ポイント: 丁寧語は、相手の動作か自分の動作かに関係なく、言葉そのものを丁寧にする働きをする。尊敬語や謙譲語と 組み合わせて 使う場合がほとんどである。
2. 敬語レベル別の比較表
同じ意味を伝える場合でも、状況に応じて敬語のレベルを調整する必要がある。以下の表は、最もよく使われる表現を4段階で比較したものである。
| 意味 | 普通体(友達) | 丁寧語(一般) | ビジネス敬語 | 最上位の格式 |
|---|---|---|---|---|
| 了解 | わかった | わかりました | 承知しました (しょうちしました) | 承知いたしました |
| お詫び | ごめん | すみません | 申し訳ありません | 申し訳ございません |
| 依頼 | 頼む | お願いします | お願いいたします | お願い申し上げます |
| 意向確認 | どうする? | どうしますか? | いかがなさいますか? | いかがいたしましょうか |
| 問題なし | いいよ | いいですよ | 問題ございません | 差し支えございません |
| 訪問 | 行くよ | 行きます | 参ります | 伺います |
| 確認済み | 見た | 見ました | 拝見しました | 拝見いたしました |
| 待機の依頼 | 待って | 待ってください | お待ちください | 少々お待ちいただけますでしょうか |
3. 間違えやすい敬語表現と正しい使い方
ビジネスの現場でよく起きる敬語の誤りを整理する。とくに 二重敬語 と 尊敬語と謙譲語の混同 に注意したい。
3-1. 二重敬語 — 敬語の付けすぎ
二重敬語とは、同じ種類の敬語を重ねて使ってしまう誤った表現である。丁寧にしようという意図とは裏腹に、かえって不自然で品のない印象を与える。
| 誤った表現 | 問題点 | 正しい表現 |
|---|---|---|
| おっしゃられる | 尊敬語(おっしゃる) + 尊敬語(れる) の重複 | おっしゃる |
| お召し上がりになられる | 尊敬語の二重適用 | 召し上がる / お召し上がりになる |
| 拝見させていただきます | 謙譲語(拝見) + 謙譲語(させていただく) の重複 | 拝見します / 拝見いたします |
| 伺わせていただきます | 謙譲語(伺う) + 謙譲語(させていただく) の重複 | 伺います |
| ご覧になられますか | 尊敬語(ご覧になる) + 尊敬語(られる) の重複 | ご覧になりますか |
| お越しになられました | 尊敬語の二重適用 | お越しになりました |
3-2. 尊敬語と謙譲語の混同
| 誤った表現 | 問題点 | 正しい表現 |
|---|---|---|
| 社長が申しておりました | 社内の上司に謙譲語を使っている(社外対応の場合) | 社長がおっしゃっておりました(社外では社内の上司も低めるため、実際には「社長が申しておりました」が正しい。状況によって変わる) |
| 部長、拝見してください | 相手の動作に謙譲語を使っている | 部長、ご覧ください |
| お客様が参りました | 相手の動作に謙譲語を使っている | お客様がいらっしゃいました |
| お客様に申す | 相手の動作に謙譲語を使っている | お客様におっしゃる → お客様に申し上げる (自→他) |
3-3. その他のよくある誤り
| 誤った表現 | 正しい表現 | 説明 |
|---|---|---|
| 了解しました | 承知しました / かしこまりました | 「了解」は対等な相手や目上から目下に使うニュアンス |
| ご苦労様です | お疲れ様です | 「ご苦労様」は目上から目下に使う表現 |
| なるほどですね | おっしゃる通りです / さようでございますね | 「なるほど」自体が相手を評価するニュアンス |
| 社長様 / 部長殿 | 社長 / 部長 (役職名自体が敬称) | 役職名 + 様は二重敬称 |
| よろしかったでしょうか | よろしいでしょうか | 過去形の使用が不自然(バイト敬語) |
| ~のほう | ~を / ~は | 不要な婉曲表現(バイト敬語) |
4. ビジネスの場面別の敬語の使い方
4-1. 電話応対
日本のビジネスでは電話が今も重要なコミュニケーション手段である。基本のマナーをしっかり身につけておきたい。
電話を受けるとき
お電話ありがとうございます。株式会社○○の△△でございます。
(=電話ありがとうございます。株式会社○○の△△です)
はい、営業部の△△が承ります。
(=はい、営業部の△△が対応します)
担当者が不在のとき
申し訳ございません。あいにく△△は外出しております。
戻り次第、折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか。
(=すみません。あいにく△△は外出中です。
戻ったら折り返し電話してもいいですか)
電話をかけるとき
お世話になっております。株式会社○○の△△と申します。
□□様はいらっしゃいますでしょうか。
(=お世話になっています。株式会社○○の△△といいます。
□□さんはいますか)
要点整理:
- 社内の人について社外の人に話すときは、敬称を外して謙譲語を使う。(例: 佐藤部長 → 部長の佐藤 / 佐藤)
- 3コール以内に取るのが基本のマナーで、遅れた場合は「お待たせいたしました」を先に言う。
- 電話では「もしもし」を使わない。
4-2. ミーティング / 会議
会議を始めるとき
本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
それでは、会議を始めさせていただきます。
(=今日は忙しい中、集まってくれてありがとうございます。
では、会議を始めます)
意見を述べるとき
一つ、ご提案があるのですが、よろしいでしょうか。
(=一つ提案があるのですが、いいですか)
私の考えを申し上げてもよろしいでしょうか。
(=私の考えを言ってもいいですか)
反対意見を述べるとき
おっしゃる通りかと存じますが、別の観点から申し上げますと…
(=言うとおりだと思いますが、別の見方をすると…)
ごもっともなご意見ですが、一点だけ確認させていただきたいのですが。
(=もっともな意見ですが、一点だけ確認させてください)
会議の締めくくり
本日の議事録は、明日中にお送りいたします。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
(=今日の議事録は明日中に送ります。
確認をお願いします)
4-3. メール
ビジネスメールは敬語を活かす中心的な領域である。基本の構造を確認しておこう。
メールの基本構造
宛先: 会社名 + 部署名 + 役職 + 氏名 + 様
挨拶: お世話になっております。/ いつもお世話になっております。
本文: 用件
結び: 何卒よろしくお願いいたします。
署名: 会社名、氏名、連絡先
5. ビジネスメール作成テンプレート
5-1. 依頼メール
件名:【ご依頼】○○に関するお見積もりのお願い
株式会社ABC
営業部 田中様
いつもお世話になっております。
株式会社XYZの金でございます。
早速ですが、○○プロジェクトに関しまして、
下記の内容でお見積もりをお願いできますでしょうか。
■ 対象:○○システムの開発
■ 期間:2026年4月〜6月
■ 予算規模:ご相談させていただければ幸いです
お忙しいところ大変恐縮ですが、
○月○日までにご回答いただけますと幸いです。
ご不明な点がございましたら、
お気軽にご連絡くださいませ。
何卒よろしくお願い申し上げます。
---
株式会社XYZ 開発部
金 永柱(キム ヨンジュ)
TEL: 03-xxxx-xxxx
Email: kim@xyz.co.jp
ポイント:
- 「お願いできますでしょうか」 — 依頼をやわらかく伝える
- 「恐縮ですが」 — クッション言葉で負担をやわらげる
- 「幸いです」 — 丁寧な希望の表現
5-2. お詫びメール
件名:【お詫び】○○の納品遅延について
株式会社ABC
システム部 佐藤部長
平素より大変お世話になっております。
株式会社XYZの金でございます。
この度は、○○の納品が予定日より遅延いたしましたこと、
誠に申し訳ございません。
遅延の原因は、□□工程において想定外の不具合が発生したためでございます。
現在、全力で対応しており、○月○日までには納品完了の見込みでございます。
今後はこのようなことがないよう、
工程管理を徹底してまいります。
重ねてお詫び申し上げますとともに、
引き続きご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
---
株式会社XYZ 開発部
金 永柱(キム ヨンジュ)
ポイント:
- お詫び → 原因の説明 → 対応策 → 再発防止 → 再度のお詫び、という構成に従う
- 「誠に申し訳ございません」 — 最も格式の高いお詫びの表現
- 「重ねてお詫び申し上げます」 — 締めくくりでもう一度お詫びする
5-3. 報告メール
件名:【ご報告】○○プロジェクト 進捗報告(3月第2週)
営業部 山田課長
お疲れ様です。開発部の金です。
○○プロジェクトの今週の進捗をご報告いたします。
■ 完了タスク
・APIエンドポイントの実装(予定通り)
・単体テストの作成(カバレッジ85%)
■ 進行中タスク
・フロントエンドとの結合テスト(○月○日完了予定)
■ 課題・リスク
・外部APIの仕様変更により、一部修正が必要
→ 対応策:○日までに影響範囲を調査し、ご報告いたします
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
ご質問がございましたら、お気軽にお申し付けください。
---
開発部 金 永柱
ポイント:
- 社内メールでは「お疲れ様です」で書き出すのが一般的
- 報告は 完了 → 進行中 → 課題 の順に整理する
- 「お申し付けください」 — 謙譲の姿勢を示す表現で、上司にも適切
5-4. 日程調整メール
件名:【日程調整】○○に関するお打ち合わせのお願い
株式会社ABC
企画部 鈴木様
いつもお世話になっております。
株式会社XYZの金でございます。
○○の件につきまして、お打ち合わせのお時間をいただきたく、
ご連絡いたしました。
下記の日程でご都合のよい日時をお教えいただけますでしょうか。
① 3月12日(木)14:00〜15:00
② 3月13日(金)10:00〜11:00
③ 3月16日(月)15:00〜16:00
上記以外でも、ご都合のよい日時がございましたら、
お知らせいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
6. 面接での敬語の使い方
日本企業(とくにIT企業)の面接では、敬語を正確に使えるかどうかが 合否を左右する決定的な要素 の一つになる。
6-1. 面接の基本表現
| 場面 | 表現 |
|---|---|
| 入室時 | 失礼いたします。(=失礼します) |
| 自己紹介の始め | ○○と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。(=○○といいます。今日は時間をもらってありがとうございます) |
| 経歴の説明 | 前職では、○○に携わっておりました。(=前の職場では○○の仕事を担当していました) |
| 志望動機 | 御社の○○という点に魅力を感じ、志望いたしました。(=御社の○○という点に魅力を感じて応募しました) |
| 強みのアピール | ○○の経験を活かして、御社に貢献できると考えております。(=○○の経験を活かして御社に貢献できると思います) |
| 質問するとき | 一点、伺ってもよろしいでしょうか。(=一つ聞いてもいいですか) |
| 退室時 | 本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。(=今日は忙しい中、貴重な時間をもらってありがとうございました) |
6-2. 面接で避けるべき表現
| 避けるべき表現 | 正しい表現 | 理由 |
|---|---|---|
| 俺 / 僕 | 私 (わたくし / わたし) | 面接では必ず「わたし」または「わたくし」を使う |
| 御社(ごしゃ) — 読み間違い | 御社 (おんしゃ) | 口頭では「おんしゃ」、文書では「貴社(きしゃ)」 |
| できます (断定) | ~と考えております / ~に自信がございます | 断定しすぎると傲慢な印象を与える |
| 特にありません (質問なし) | ○○について伺いたいのですが | 必ず1つ以上の質問を用意する |
6-3. 面接の自己紹介の例文
○○と申します。
本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。
前職では、株式会社△△にて5年間、
バックエンドエンジニアとしてシステム開発に携わっておりました。
主にJavaとSpring Bootを用いたマイクロサービスの設計・実装を担当し、
チームリーダーとして6名のメンバーをまとめてまいりました。
御社の「技術で社会課題を解決する」というビジョンに深く共感し、
これまでの経験を活かして貢献したいと考え、志望いたしました。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
7. IT業界特有の日本語表現
IT業界では、一般的なビジネス敬語に加えて、独特のカタカナ語と業界の慣用表現が数多く使われる。
7-1. ITビジネスでよく使われるカタカナ用語
| カタカナ用語 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| アジェンダ | 会議の議題 | 本日のアジェンダをご確認ください。 |
| エビデンス | 証拠・根拠 | テスト結果のエビデンスを残してください。 |
| マイルストーン | 節目・中間目標 | 次のマイルストーンは3月末です。 |
| バッファ | 余裕・バッファ | スケジュールにバッファを持たせましょう。 |
| フィードバック | 意見・指摘 | コードレビューのフィードバックをお願いします。 |
| コンセンサス | 合意 | 関係者のコンセンサスを取る必要があります。 |
| リスケ | 日程変更 (reschedule) | 会議をリスケしてもよろしいでしょうか。 |
| アサイン | 割り当て (assign) | このタスクは田中さんにアサインされています。 |
| ペンディング | 保留 | この案件はペンディングとなっております。 |
| ローンチ | 公開・リリース (launch) | 新サービスのローンチは来月を予定しております。 |
7-2. ITミーティングでの敬語 + 専門用語の組み合わせ
【スプリント振り返りミーティングにて】
今回のスプリントの振り返りをさせていただきます。
(=今回のスプリントの振り返りをします)
デプロイに関しまして、一点ご報告がございます。
(=デプロイについて一点報告があります)
こちらのプルリクエストについて、ご確認いただけますでしょうか。
(=このプルリクエストを確認してもらえますか)
本番環境への反映は、来週の月曜日を予定しております。
(=本番環境への反映は来週の月曜日の予定です)
7-3. Slack / 社内チャットでの敬語レベル
社内のSlackやTeamsでは、格式を少し落とした丁寧語のレベルが一般的である。
| フォーマルなメール | Slack(社内) |
|---|---|
| ご確認いただけますでしょうか。 | ご確認お願いします! / 確認お願いします! |
| お手数をおかけいたしますが | すみませんが / お手数ですが |
| ご報告申し上げます | 共有です / 報告です |
| 何卒よろしくお願い申し上げます | よろしくお願いします! |
8. クッション言葉 完全ガイド
クッション言葉とは、本題の前に添えて相手への配慮を示す前置き表現である。ビジネス日本語では必須といえる。
依頼するとき
| 表現 | 意味 | 丁寧度 |
|---|---|---|
| すみませんが | 軽く断りを入れる言い方 | 普通 |
| 恐れ入りますが (おそれいりますが) | 恐縮の気持ちを添える言い方 | 高い |
| お手数をおかけしますが | 手間を取らせることを詫びる言い方 | 高い |
| お忙しいところ恐縮ですが | 相手の多忙に配慮する言い方 | 非常に高い |
| ご多忙のところ恐れ入りますが | 最も改まった配慮の言い方 | 最上位 |
断るとき
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 申し訳ございませんが | 深くお詫びしてから断る |
| せっかくのお話ですが | 相手の申し出を立てながら断る |
| あいにくですが | 都合が合わないことを伝える |
| 大変心苦しいのですが | 断るのがつらいという気持ちを示す |
質問するとき
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 差し支えなければ (さしつかえなければ) | 相手に支障がなければ、と前置きする |
| もしよろしければ | 相手の意向を尊重して尋ねる |
| 失礼ですが | 立ち入った質問をする前に添える |
9. 実践練習問題
以下の問題で敬語を使う力を点検してみよう。
問題1: 正しい敬語を選ぶ
次の中から正しい敬語表現を選びなさい。
(1) 顧客に「待ってほしい」と伝えるとき:
- a) ちょっと待ってください。
- b) 少々お待ちください。
- c) 少々お待ちになられてください。
(2) 上司に報告書を「見た」と伝えるとき:
- a) 報告書を見ました。
- b) 報告書を拝見しました。
- c) 報告書を拝見させていただきました。
(3) 取引先に「うちの部長がそう言った」と伝えるとき:
- a) 佐藤部長がそうおっしゃいました。
- b) 部長の佐藤がそう申しておりました。
- c) 佐藤部長様がそう言いました。
(4) 顧客に「わかりました」と伝えるとき:
- a) 了解しました。
- b) わかりました。
- c) 承知いたしました。
問題2: 誤った敬語を直す
次の文の敬語の誤りを見つけて正しく直しなさい。
(1) お客様がお越しになられました。
(2) 社長が拝見してくださいました。
(3) 資料のほうを拝見させていただきました。
(4) 了解しました。すぐ対応いたします。
問題3: 場面別のメール作成
次の場面に合うメールの書き出しを作成しなさい。
(1) 初めて連絡する取引先にメールを送るときの挨拶
(2) 納期の遅延を謝罪するときの書き出し
(3) 会議の日程変更を依頼するときのクッション言葉 + 本文
解答
問題1の解答: (1) b, (2) b, (3) b, (4) c
問題2の解答:
- お客様がお越しになりました。 (二重敬語を解消)
- 社長がご覧くださいました。 (拝見は謙譲語なので上司の動作には使えない → 尊敬語のご覧になるへ変更)
- 資料を拝見いたしました。 (「のほう」を削除し、二重の謙譲語を修正)
- 承知いたしました。すぐ対応いたします。 (了解 → 承知に変更)
問題3の解答例:
- 突然のご連絡失礼いたします。株式会社○○の△△と申します。
- この度は、納品の遅延につきまして、誠に申し訳ございません。
- 恐れ入りますが、会議の日程を変更していただくことは可能でしょうか。
10. ビジネス敬語チェックリスト
日本のビジネスの現場で活用できる、自己点検用のチェックリストである。
メールを書く前のチェック
- 宛先の会社名、部署名、氏名に誤字はないか?
- 敬称(様)を正しく使っているか?(役職名 + 様の二重敬称になっていないか?)
- 書き出しの挨拶は適切か?(社外: お世話になっております / 社内: お疲れ様です)
- クッション言葉を適切に使っているか?
- 自分の動作に謙譲語、相手の動作に尊敬語を正しく使っているか?
- 二重敬語になっていないか?
- 結びの挨拶は適切か?(何卒よろしくお願いいたします)
- 署名は入っているか?
電話応対のチェック
- 「もしもし」を使っていないか?
- 会社名と自分の名前をはっきり名乗ったか?
- 社内の人を社外に紹介するとき、敬称を外して謙譲語を使ったか?
- 通話の終わりを「失礼いたします」で締めくくったか?
ミーティング / 会議のチェック
- 時間を守ったか?(5分前の到着)
- 発言のときにクッション言葉を使ったか?
- 相手の意見にまず同意を示してから反対意見を述べたか?
- 議事録を共有するとき、適切な敬語を使ったか?
面接のチェック
- 入室時に「失礼いたします」、退室時に挨拶をしたか?
- 一人称は「わたし」または「わたくし」を使ったか?
- 応募先の会社を「御社(おんしゃ)」と呼んだか?(書類では「貴社(きしゃ)」)
- 質問を最低1つ以上用意したか?
まとめ
ビジネス日本語の敬語は一朝一夕で完璧になるものではない。しかし、この記事で整理した 3分類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)の基本原則 をしっかり理解し、場面別のテンプレート を繰り返し活用すれば、実務で自然に使えるようになる。
ポイントは三つである。
- 主語が誰なのかを常に確認する — 相手の動作なら尊敬語、自分の動作なら謙譲語
- クッション言葉を習慣にする — 恐れ入りますが、お手数ですが などを本題の前に添える
- 二重敬語を避ける — 丁寧にしようとして、かえって不自然な日本語にならないよう注意する
敬語が難しいと感じるときは、この記事のテンプレートを参考にして、まずは そのまま真似て書くこと から始めよう。繰り返すうちにパターンが身につき、自然に口から出るようになるはずだ。
参考資料 (References)
- タウンワークマガジン — よく使う敬語変換表 — 尊敬語・謙譲語・丁寧語の変換表
- Indeed Japan — ビジネスでよく使用する敬語表現一覧 — ビジネス敬語表現のまとめ
- LIG — ビジネスで使う敬語一覧とよくある間違い — 間違えやすい敬語と正しい使い方
- カイクラ — 電話対応で役立つ敬語一覧 — 電話応対の敬語ガイド
- ビジネスメールの教科書 — ビジネスメール文例 — ビジネスメールの文例集
- リコー — 間違いやすい二重敬語 — 二重敬語の説明と例
- doda — 面接での正しい自己紹介の仕方 — 面接の自己紹介ガイド