LabHub

ブログ

AI衛星 & 地球観測 2026 完全ガイド - Planet Labs · Maxar Intelligence · Capella Space · ICEYE · Spire Global · BlackSky · Albedo · SkyFi · Sentinel · 韓国 KARI · 日本 JAXA + Synspective 詳解

한국어English日本語

はじめに — 2026年5月、地球観測は「毎日更新されるデジタルツイン」になった

10年前、衛星画像は数日から数週間単位で届く静的データだった。2026年5月現在、そのパラダイムは完全に崩れた。Planet Labs の SuperDove 群 200機超は、ほぼ全陸地を毎日 3 m 解像度で撮り続けており、Maxar Intelligence は WorldView Legion 3機 + WorldView-3 で 30 cm 級光学をほぼ時間単位で提供する。Capella Space と ICEYE は雲と夜間を無視して 50 cm SAR を、Spire Global の 100機 群は AIS · ADS-B · GNSS-RO をリアルタイムで集める。

本稿はマーケティング資料ではなく、2026年5月現在、実際にデータを打ち上げ・収集・販売・解析している事業者を一気に整理する。光学 · SAR · RF · ハイパースペクトル · 熱赤外までモダリティ別に、その上に乗る Planet Insights Platform · Maxar Esri Foundation · EarthDaily Analytics · Orbital Insight などの解析 SaaS、IBM-NASA Prithvi · Clay などの EO ファウンデーションモデル、KOMPSAT-JAXA ALOS-Synspective に連なる日韓トラックまでを一度に押さえる。

EO 2026 スタック — 6モダリティに分解する

まず全体像から。2026年5月現在、商用 EO は次の6モダリティに分かれる。

  1. 光学 (electro-optical): 可視光 + 近赤外。3 m 以下が標準、10 cm 級が登場。
  2. SAR (Synthetic Aperture Radar): マイクロ波の能動センサ。雲と夜間に無関係。
  3. RF (Radio Frequency): 地表 · 海上信号の受動受信。SIGINT と海上船舶追跡。
  4. ハイパースペクトル: 100 バンド超。鉱物探査 · メタン · 作物ストレス。
  5. 熱赤外 (thermal IR): 山火事 · ヒートアイランド · 工場稼働。
  6. 気象 · 大気 (meteorological): 静止軌道と GNSS-RO。天気予報と気候。

各モダリティに独立の事業者がいて、その上に解析 SaaS と政府の無料データが重なる。順番に見ていく。

光学 EO — Planet Labs の Dove · SuperDove · Pelican · Tanager

商用光学 EO 最大の群を運用するのが Planet Labs PBC の Dove シリーズ。2026年5月時点のラインナップは次の通り。

API 呼び出しの典型は次のとおり。

import os
import requests
from datetime import datetime, timedelta

API_KEY = os.environ["PLANET_API_KEY"]
URL = "https://api.planet.com/data/v1/quick-search"

search = {
    "item_types": ["PSScene"],
    "filter": {
        "type": "AndFilter",
        "config": [
            {
                "type": "GeometryFilter",
                "field_name": "geometry",
                "config": {
                    "type": "Polygon",
                    "coordinates": [[
                        [126.9, 37.5], [127.1, 37.5],
                        [127.1, 37.6], [126.9, 37.6],
                        [126.9, 37.5]
                    ]]
                }
            },
            {
                "type": "DateRangeFilter",
                "field_name": "acquired",
                "config": {
                    "gte": (datetime.utcnow() - timedelta(days=7)).isoformat() + "Z",
                    "lte": datetime.utcnow().isoformat() + "Z"
                }
            },
            {"type": "RangeFilter", "field_name": "cloud_cover", "config": {"lte": 0.1}}
        ]
    }
}

resp = requests.post(URL, auth=(API_KEY, ""), json=search)
for item in resp.json()["features"][:5]:
    print(item["id"], item["properties"]["acquired"], item["properties"]["cloud_cover"])

Planet の強みは 日次の更新性 にある。同じ農地 · 港湾 · 工事現場を毎日同じピクセルグリッドで比較できる事業者は、2026年でも Planet がほぼ唯一だ。

Maxar Intelligence — 30 cm 解像度と WorldView Legion

長らく商用 EO を支配してきた Maxar は 2024年9月に宇宙機関連事業を切り離し(プライベートの合併で Aurora Innovation 系へ移管)、Maxar Intelligence は衛星運用と画像販売を、Maxar Space Systems はハードウェア製造を担当する形に分割された。

2026年5月時点で Maxar Intelligence のラインナップは次の通り。

ウクライナ戦争以降、Maxar 画像への政府 · メディア需要が急増した。米 NRO EOCL (Electro-Optical Commercial Layer) 契約でも最大シェア。一般企業は SecureWatch または Esri 統合経由で画像を購読する。

BlackSky Gen-3 — 35 cm と時間単位の再訪

BlackSky は 2021年に SPAC で上場した。2026年5月時点で Gen-2 群 14機を運用、Gen-3 次世代群の打ち上げが 2026年に開始された。

BlackSky の差別化は 頻度優先。30 cm 解像度は Maxar に譲っても、同地点をより頻繁に撮ることで勝負する。軍事 · インテリジェンス市場では Maxar と二分する。

Albedo · Satellogic · Pixxel — 次世代光学の挑戦者

光学 EO 市場に違う軸で割り込む 3社。

Albedo の 10 cm 解像度は、2026年商用 EO の限界線を再定義した。米国 NOAA のライセンスガイドラインが 25 cm から 10 cm に緩和されたことで初めて成立したビジネスだ。

SAR — Capella Space と ICEYE の 50 cm 競争

光学とは別軸が SAR。能動マイクロ波センサで、雲 · 夜間 · もやに左右されず地表を観測する。2026年5月時点で4事業者が競合する。

SAR 画像は光学とは認知コストが違う。ピクセルは灰色の強度だが、その中に表面粗さ · 湿度 · 金属性が含まれる。変化検知 (InSAR 干渉法) は mm 単位の地表変形まで捉える。

import sarsen   # オープンソースの SAR 処理
from sarsen import apps

# Sentinel-1 GRD シーンを取得し地形補正を適用
apps.terrain_correction(
    input_path="S1A_IW_GRDH_20260501.zip",
    dem_path="copernicus_dem.tif",
    output_path="s1_corrected.tif",
    interp_method="bilinear",
)

ICEYE のウクライナ事例 — 商用 SAR の軍用検証

ICEYE は 2022年以降、ウクライナ政府に SAR データを直接供給する最初の事業者となった。50 cm 解像度で雲と夜間でもロシア軍の資産を追跡し、商用 SAR が軍用で十分に通用する最初の事例となった。

2024年には ICEYE はウクライナ政府に衛星1機の運用権そのものを譲渡した。その後ポーランドやスペインなども ICEYE と政府向け SAR 契約を結んだ。2026年5月時点で ICEYE は NATO 加盟国 6 か国と追加契約を結んでいる。

Synspective StriX と日本の SAR トラック

Synspective は東大発のスピンアウトとして 2020年から StriX シリーズを打ち上げている。2026年5月時点のラインナップは以下。

JAXA の ALOS-2 (PALSAR-2) は L-band SAR で、X-band の Synspective と補完的だ。JAXA は 2026年に ALOS-4 の打ち上げを準備中で、日本の EO 自給化政策の中核だ。

Umbra Lab — 16 cm の新記録とオープンカタログ

Umbra Lab は 2021年の初号機打ち上げ以降、最も急成長した SAR 事業者だ。2026年5月時点で 9機 運用、16 cm 解像度という商用 SAR 最高記録を保持する。

Umbra の差別化は二つの軸にある。

Umbra は米 NRO Stratum 2 SAR 契約の受注者でもある。つまり NRO が直接発注する商用 SAR の中核供給者となっている。

Sentinel-1·2·3·5p·6 — ESA の公共 EO バックボーン

ESA (欧州宇宙機関) の Copernicus プログラムは 2014年から Sentinel シリーズを無料公開してきた。2026年5月時点のラインナップは次の通り。

Sentinel-1 と 2 は事実上、商用 EO のベースラインだ。農業 · 災害 · 都市モニタリング学術研究の 80% は Sentinel-2 から始まる。

NASA Landsat 8·9 と Landsat Next

NASA-USGS の Landsat プログラムは 1972年から最長の継続的衛星観測を提供してきた。2026年5月時点の運用機は次の通り。

Landsat は Sentinel-2 と並んで 無料公共データの二大柱。50年以上の時系列を持つ唯一のデータセットで、気候 · 森林 · 都市変化研究の標準データセットだ。

RF SIGINT — Spire Global · HawkEye 360 · Unseenlabs

光学 · SAR とは別に、衛星から RF 信号を受信する トラックも独立して育った。

RF 群は光学が見えないものを見る。GPS を切って航行する漁船 (IUU 漁業)、トランスポンダーを切った船 (ダークベッセル)、夜間通信活動の位置、いずれも RF で捉えられる。2025年に米国の海洋安全保障政策で HawkEye 360 のデータは標準入力となった。

Spire Global — AIS · ADS-B · GNSS-RO のフルスタック

Spire Global の 100機 LEMUR 群は3種類のデータを同時に集める。

Spire の GNSS-RO データは NOAA · ECMWF などの気象機関に直接入力され、天気予報モデルを高精度化する。2026年5月時点で Spire は NOAA Commercial Weather Data Program の最大供給者だ。

import requests

token = "YOUR_SPIRE_TOKEN"
headers = {"Authorization": f"Bearer {token}"}

# 特定時刻 · 海域の AIS メッセージ
params = {
    "received_before": "2026-05-16T00:00:00Z",
    "received_after": "2026-05-15T23:00:00Z",
    "bbox": "125,33,130,38",  # 朝鮮半島南海
    "limit": 100,
}

resp = requests.get(
    "https://ais.spire.com/messages",
    headers=headers,
    params=params,
)
for msg in resp.json()["data"]:
    print(msg["mmsi"], msg["timestamp"], msg["latitude"], msg["longitude"])

ハイパースペクトル EO — Pixxel · Wyvern · HySpecIQ · OroraTech

ハイパースペクトルは可視光から短波赤外 (SWIR) までを 100 バンド超に分け、物質の分光シグネチャ を識別する。2026年5月時点で4事業者が競合する。

ハイパースペクトルは普通の光学 · SAR では捉えられない 何が何か を教えてくれる。メタン漏洩、作物の窒素不足、鉱物種、海藻種の分類までも分光シグネチャで識別する。

メタン · 温室効果ガスモニタリング — Tanager · MethaneSAT · GHGSat · Carbon Mapper

気候危機対応の文脈で、メタン漏洩モニタリング が 2024年以降で最もホットな EO 応用となった。2026年5月時点のラインナップは以下。

MethaneSAT の喪失は 2025年の EO コミュニティで大事件だった。その穴を Tanager + Carbon Mapper と GHGSat が埋める形だ。米 EPA や EU のメタン規制が強化されるにつれ商用需要も急速に拡大している。

山火事 · 熱赤外 — OroraTech · NASA FIRMS · CalFire AI

山火事の検出 · 拡散予測は、2024年のカナダ · ハワイ山火事、2025年のカリフォルニア · LA 火災を経て EO の主要応用となった。

import requests

# NASA FIRMS リアルタイム火災ピクセル (VIIRS 24h)
MAP_KEY = "YOUR_FIRMS_MAP_KEY"
url = (
    f"https://firms.modaps.eosdis.nasa.gov/api/area/csv/{MAP_KEY}/"
    f"VIIRS_SNPP_NRT/USA/1"
)
resp = requests.get(url)
print(resp.text[:500])

静止軌道の気象衛星 — GOES-T · Himawari · 天里安

低軌道 EO 群とは別に、静止軌道 (GEO) 気象衛星 がグローバル天気予報の中核だ。

この 6機が事実上、地球全体の 10 分単位の天気画像を作り出す。PM2.5 · 台風 · 山火事検出の一次ソースだ。

JAXA ALOS · Himawari · GOSAT — 日本の EO ラインナップ

JAXA (宇宙航空研究開発機構) は 2026年5月時点で次の EO 衛星を運用する。

日本の EO 政策は 自給 + 限定的商用化 路線だ。ALOS データは RESTEC 経由で一部商用販売され、政府需要が優先される。

韓国 KOMPSAT · KARI ラインナップ

KARI (韓国航空宇宙研究院) の多目的実用衛星 (KOMPSAT) シリーズの 2026年5月時点は以下。

KOMPSAT 画像は SI Imaging Services (SIIS) がグローバル商用販売を担当する。韓国領土を最も頻繁に撮るのは KOMPSAT-7 (30 cm) と KOMPSAT-3A (55 cm) だ。

韓国 EO スタートアップ — Telepix · SIIS · Rise · Nara Space

韓国でも 2020年以降に EO スタートアップが相次いで登場した。

韓国政府は 2030年までに KARI 以外で民間 EO 衛星 100機以上の打ち上げを目標とする。KOMPSAT 単独依存から民間群への拡大が政策方向だ。

日本 EO スタートアップ — Synspective · Axelspace · iQPS · Sky Perfect

JAXA 以外の日本民間 EO トラックも多様だ。

日本 EO スタートアップの強みは SAR 群の厚み だ。Synspective + iQPS だけで 2030年までに 60機超の SAR 群を持つ。これは ICEYE を上回る規模となる。

解析 SaaS — Planet Insights · Orbital Insight · Descartes Labs

衛星を直接運用せず、画像を解析してインサイトとして売る 事業者も独立トラックだ。

解析 SaaS は衛星画像を「API 化」する流れを進める。SkyFi は特に クレジットカードで衛星画像を1枚注文 できる初のマーケットプレースだ。

オープンデータ + STAC — Microsoft Planetary Computer · AWS Open Data · Earth Engine

商用 EO 以外に、無料の公共 EO データ の量とツーリングが爆発的に拡大した。

STAC + Planetary Computer のワークフローは次のとおり。

import pystac_client
import planetary_computer

catalog = pystac_client.Client.open(
    "https://planetarycomputer.microsoft.com/api/stac/v1",
    modifier=planetary_computer.sign_inplace,
)

search = catalog.search(
    collections=["sentinel-2-l2a"],
    bbox=[126.9, 37.5, 127.1, 37.6],
    datetime="2026-05-01/2026-05-15",
    query={"eo:cloud_cover": {"lt": 10}},
)

items = list(search.items())
print(f"{len(items)} 件のシーン")
for item in items[:3]:
    print(item.id, item.datetime, item.properties["eo:cloud_cover"])

EO ファウンデーションモデル — IBM-NASA Prithvi · Clay · Satlas · NVIDIA Earth-2

2024-2025年にかけて 地球観測ファウンデーションモデル が本格的に登場した。

Prithvi の利用コードは次のとおり。

from huggingface_hub import hf_hub_download
import torch
from einops import rearrange

ckpt = hf_hub_download(
    repo_id="ibm-nasa-geospatial/Prithvi-EO-2.0-600M",
    filename="Prithvi_EO_V2_600M.pt",
)

model = torch.load(ckpt, map_location="cpu", weights_only=False)
model.eval()

# 入力: (B, T, C, H, W) = batch, time, channels, height, width
# Prithvi-2.0: 6 ch (HLS B02,B03,B04,B05,B06,B07), 224x224
x = torch.randn(1, 4, 6, 224, 224)
with torch.no_grad():
    feats = model.encoder(x)
print(feats.shape)  # 学習されたトークン列

ウクライナ戦争と商用 EO の軍用検証

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、商用 EO の軍事価値を一夜で証明 した出来事だった。以後の4年間で次の変化が起きた。

2026年5月現在、米国国防 · 情報予算における商用 EO の割合は 10年前比で5倍以上。政府衛星単独の時代は完全に終わった。

AI 活用ユースケース — 作物 · ダークベッセル · 保険 · 鉱物

EO + AI の実用例は 2026年も急速に拡大している。

各ドメインに専用 AI モデルがあるものの、いずれも Sentinel-2 + 商用 EO + 時系列トランスフォーマー の組み合わせに収束する流れだ。

導入ロードマップ — 0から EO 活用まで

最初に EO を導入するときは、次の順序が安全だ。

  1. 無料データから始める: Sentinel-2 + Landsat 8/9。STAC + Planetary Computer で検索 · ダウンロード。
  2. AI ライブラリを習得: TorchGeo、raster-vision、eo-learn。PyTorch ベース。
  3. ファウンデーションモデルを活用: Prithvi または Clay を下流タスクに微調整。
  4. 高解像度が必要なら商用発注: SkyFi (消費者) または Planet/Maxar (エンタープライズ) のトライアル。
  5. SAR が必要なら ICEYE/Capella/Umbra/Synspective の一社をトライアル: 光学とは別の学習曲線。
  6. 解析 SaaS を評価: Orbital Insight、Ursa Space、EarthDaily 等。自前運用より速くて安い。
  7. 自社運用 / 自社衛星は最後: KOMPSAT · JAXA · KARI のような政府規模でなければ、自社衛星打ち上げは非現実的。

EO は 「衛星を打ち上げるゲーム」ではなく、データ · モデル · ドメイン知識のゲーム だ。最初の導入時は無料データとオープンモデルだけで十分に遠くまで行ける。

おわりに — 2026年5月、EO は「観測ではなく自動化」になった

本稿の結論は単純だ。2026年の地球観測は データ収集 (観測) ではなく解析自動化 (automation) のゲームになった。Planet 200機、ICEYE 30機、Spire 100機でデータはすでに溢れている。問題はその中から何を自動で見つけ出すかだ。

最大の変化は EO ファウンデーションモデルの登場 だ。Prithvi や Clay などのオープンモデルが下流タスクの納品を加速させており、NVIDIA Earth-2 は気象 · 気候のデジタルツインに本格的に取り組んでいる。5年後、LLM のように「EO ファウンデーションモデル」は事実上の標準インフラとなるだろう。

もう一つの変化は 商用 EO の軍用検証 だ。ウクライナ戦争は商用衛星が政府衛星と同等、あるいはより速いデータソースになり得ることを証明した。2026年の米国国防予算はこれを反映し、EOCL · Stratum 契約を毎年拡大している。

ツール選定に時間をかけすぎないこと。無料データ (Sentinel + Landsat) とオープンモデル (Prithvi + Clay) だけで 90% の活用は可能だ。そこから始めれば良い。

References

コメント

まだコメントはありません。

ログインするとコメントできます