LabHub

ブログ

AI 安全 / 評価 / レッドチーミング 2026 — Inspect AI / Garak / PyRIT / Promptfoo / OpenAI Evals / lm-eval-harness 深掘りガイド

한국어English日本語

プロローグ — 2026年、「安全」は1つの道具で解けない

2026年5月。モデル会社は毎月新しいモデルを出し、アプリ会社はそれを取り込んでエージェントを作る。毎週誰かが新しい jailbreak を SNS に投稿し、毎月どこかの国の AI Safety Institute が新しい評価レポートを出す。安全は「RLHF をやったから大丈夫」では終わらない。安全は 評価(eval)・レッドチーミング(red-team)・ポリシー(policy)・標準(standards) の4領域が同時に回るシステムである。

問題は、この4領域の道具がそれぞれ違い、会社・政府・学界ごとに別の名前が使われていることだ。Inspect AI とは何で、Garak とどう違うのか。PyRIT はなぜ Microsoft が作り、誰が使うのか。Promptfoo は学術向けか、production 向けか。OpenAI Evals と lm-evaluation-harness は同じ役割なのか。UK AISI と Korea AISI は何が違うのか。

この記事は2026年現在の AI 安全・評価・レッドチーミング エコシステムを1枚に描く。個々の道具を深掘りするのではなく、誰が作り、何を解こうとし、どこに収まるかを整理する。チームの「安全インフラ」一行会議で、何を入れ何を外すかを決められるように。


第1章 · 2026年 AI 安全マップ — eval / red-team / policy / standards の4領域

まず大きな絵から。2026年の AI 安全エコシステムは4領域に分かれる。それぞれ別の人が作り、別の人が使う。

領域何をするか代表ツール・機関誰が使うか
Eval(評価)モデル・エージェントの能力・安全を測るInspect AI、lm-eval-harness、OpenAI Evals、Promptfoo、DeepEvalモデル会社、アプリ会社、AISI
Red-team(攻撃)モデル・アプリを敵対的に壊そうとするGarak、PyRIT、Pliny DB、MITRE ATLASセキュリティチーム、AISI、レッドチーム
Policy(ポリシー)「どこまでリリースするか」社内の意思決定OpenAI Preparedness Framework、Anthropic RSPモデル会社のガバナンス
Standards(標準)産業・政府レベルの共通基準OWASP LLM Top 10、NIST AI RMF、ISO 42001セキュリティ、コンプライアンス、政府

この4領域は互いに依存する。eval は red-team の結果を自動化する(新しい jailbreak が見つかれば eval suite に組み込まれる)。policy は eval スコアを閾値として使う(「CBRN カテゴリで X% を下回ればリリース保留」)。standards は eval と red-team が何を測るべきかの共通語彙を与える

本記事の流れは上の順番に沿う — eval(第2〜9章)、red-team(第3・4章)、policy(第11章)、standards(第12章)、そして地域差(第13章)と「誰が何を選ぶべきか」(第14章)。

一言の洞察: 「安全」は1つの道具で解けない。安全は4領域の合計である。そして2026年現在、4領域すべてを見ているチームはほとんどない。多くは1つか2つの領域しか見ていない。


第2章 · Inspect AI(Anthropic、2024.5) — UK AISI が使う eval フレームワーク

一言の定義: Anthropic が2024年5月にオープンソースで公開した LLM 評価フレームワーク。英国 AI Safety Institute(UK AISI)が中核評価ツールとして採用し、2025〜2026年には事実上「政府レベル評価の標準」となった。

なぜ作られたか: 2024年まで、LLM の評価コードはほとんど「使い捨てスクリプト」だった。モデルごとに違う API、非決定性の扱い、tool-use 評価、multi-turn 評価、judge モデル — 毎回書き直していた。Inspect AI はこれを1つのフレームワークにまとめる。評価は Dataset → Solver → Scorer の3コンポーネントで表現される。

3つの中核概念:

from inspect_ai import Task, task
from inspect_ai.dataset import example_dataset
from inspect_ai.scorer import includes
from inspect_ai.solver import generate

@task
def theory_of_mind():
    return Task(
        dataset=example_dataset("theory_of_mind"),
        solver=generate(),
        scorer=includes(),
    )

この1ファイルが1評価。inspect eval theory_of_mind.py --model anthropic/claude-sonnet-4-5 で走らせる。

UK AISI の採用が決定的だった。AISI はモデル会社からリリース前のモデルを受け取り、政府レベルの評価を行う。その評価インフラが Inspect AI である。これが事実上「政府が認める評価標準」というシグナルになり、2025年以降は US AISI、日本 AISI、韓国 AISI も Inspect AI ベースの評価を標準オプションの1つに加えた。

いつ使うか:

いつ使わないか: 単純なプロンプト A/B テスト(Promptfoo の方が軽い)、production observability(Phoenix・Langfuse の方が合う)。


第3章 · Garak(NVIDIA → 独立) — LLM 脆弱性スキャナ

一言の定義: LLM 版の nmap・OWASP ZAP。既知の攻撃シナリオをモデルに自動で打ち込み、どこで壊れるかをレポートにする。NVIDIA が2023年に開始し、2024〜2025年に独立プロジェクトに分離した。

なぜ作られたか: Leon Derczynski(NVIDIA、その後独立)は「LLM のセキュリティスキャナがない」という問題を見た。Web セキュリティには ZAP・Burp、ネットワークには nmap があるのに、LLM には何もなかった。Garak は 攻撃ライブラリ(probe) + 採点器(detector) + レポート(report) の3部でその穴を埋める。

中核概念:

# フルスキャン(時間がかかる)
garak --model_type openai --model_name gpt-4o-mini

# 特定の probe のみ
garak --model_type huggingface --model_name meta-llama/Llama-3-8b \
      --probes dan.Dan_11_0,promptinject

# レポート: garak.<timestamp>.report.html

Garak が示すもの: モデル別に、どの攻撃カテゴリで壊れるかのマトリクス。「このモデルは DAN 11.0 に47%応答、RealToxicityPrompts に12%応答」というふうに。

2026年現在の価値:

限界: 「既知の攻撃」が中心。zero-day jailbreak は捕まえられない。だから「攻撃を生成する」フレームワークである PyRIT と補完関係にある。


第4章 · PyRIT(Microsoft) — Python Risk Identification Toolkit

一言の定義: Microsoft AI Red Team が2024年にオープンソースで公開した敵対的評価フレームワーク。Garak が「既知の攻撃カタログ」なら、PyRIT は「攻撃を自動生成するオーケストレーション」。

何が違うか(Garak vs PyRIT):

GarakPyRIT
主力既知の攻撃をスキャン敵対的攻撃を自動生成
たとえnmap、OWASP ZAPMetasploit
攻撃フロー定型 probe を発射LLM が LLM を攻撃(自動変形)
学習曲線低(CLI 一行)中(orchestrator コード)
作った主体NVIDIA → 独立Microsoft AI Red Team

中核概念:

# 疑似コード — Red Teaming Orchestrator
from pyrit.orchestrator import RedTeamingOrchestrator
from pyrit.score import SelfAskTrueFalseScorer

orchestrator = RedTeamingOrchestrator(
    attack_strategy=...,
    chat_target=victim_model,        # 攻撃対象
    red_teaming_chat=attacker_model, # 攻撃モデル
    scorer=SelfAskTrueFalseScorer(...),
)
await orchestrator.apply_attack_strategy_until_completion_async(max_turns=5)

PyRIT の核心は 「1つの LLM が別の LLM を自動で壊そうとする」こと。人が毎回新しい jail ケースを書くのではなく、攻撃 LLM が会話を続けながら回避表現を自動で試す。

誰が使うか: Microsoft AI Red Team 自身と、Microsoft 顧客のセキュリティチーム。2025年以降は OpenAI・Anthropic の外部評価チームの一部も採用。学界の新 jailbreak 論文が PyRIT orchestrator で再現されるケースも増えている。

Garak と PyRIT 両方必要か: 必要。Garak は毎日の回帰スキャン(速くカタログ固定)、PyRIT は四半期の深いレッドチーミング(時間がかかり新パターンを掘る)。


第5章 · Promptfoo(YC) — プロンプトテストの事実上の標準

一言の定義: プロンプト・モデル・チェーンをユニットテストのように比較する OSS CLI。Y Combinator を経て、2024〜2025年に最速で定着した。JS/TS エコシステムの入口ツール。

なぜ作られたか: アプリ会社の立場では「どのモデルを使うべきか」「このプロンプトは前より良いか」という単純な質問が最も頻繁に出る。Inspect AI は重すぎ、OpenAI Evals は学術的。Promptfoo は YAML 1ファイルでケース定義 → CLI 一行で比較 → Web UI で結果の流れを作った。

# promptfooconfig.yaml
prompts:
  - "Translate to French: {{text}}"
  - file://prompts/translate_v2.txt
providers:
  - openai:gpt-4o-mini
  - anthropic:claude-haiku-4-5
tests:
  - vars:
      text: "Hello world"
    assert:
      - type: contains
        value: "Bonjour"
      - type: llm-rubric
        value: "Translation is natural French, not literal."

promptfoo eval 一行でモデル x プロンプトのマトリクスを回し、promptfoo view で Web UI から diff を見る。

Promptfoo が速く定着した理由:

いつ使うか:

いつ使わないか: 政府レベル評価(Inspect AI)、学術ベンチマーク(lm-eval-harness)、production observability(Phoenix)。


第6章 · OpenAI Evals — オープンソース評価の原型

一言の定義: OpenAI が2023年3月にオープンソースで公開した評価フレームワーク。「OpenAI が自社モデルの評価に使う道具」という後光。2024〜2026年に活動性は落ちたが、データセットとパターンのリファレンスとしては今も使われる。

なぜ重要か(歴史的意義): 2023年以前は「評価コードはどう書けばよいか」の共通パターンがなかった。OpenAI Evals はそれを「Eval class + JSONL データ + sampler」というパターンとしてまとめた。このパターンは以降のすべてのフレームワークに影響を与えた。

中核構造:

# evals/registry/evals/my-eval.yaml
my-eval:
  id: my-eval.dev.v0
  description: My custom eval
  metrics: [accuracy]
my-eval.dev.v0:
  class: evals.elsuite.basic.match:Match
  args:
    samples_jsonl: my_eval/samples.jsonl

oaieval gpt-4o-mini my-eval で走らせる。

2026年の位置づけ:

いつ使うか: リファレンスデータセットが必要なとき、既存の OpenAI Evals 資産を再利用するとき。


第7章 · lm-evaluation-harness(EleutherAI) — 学術標準

一言の定義: EleutherAI が作った学術用 LLM ベンチマークランナー。HuggingFace のモデルリーダーボードのバックエンド。新モデル論文の表中の数字はほとんどこのツールから出ている。

なぜ学術標準になったか: 2022年頃、新しい LLM が出るたびに論文著者が自前の評価スクリプトで MMLU スコアを報告していた。そのため、同じモデル・同じベンチマークでも論文ごとにスコアが違った。採点方式・few-shot 数・プロンプトの違いで。lm-evaluation-harness はそれを標準化した — 「同じコードで出した数字だけが比較できる」。

:

# MMLU 5-shot
lm_eval --model hf --model_args pretrained=meta-llama/Llama-3.1-8B \
  --tasks mmlu --num_fewshot 5 --device cuda --batch_size 8

# 複数ベンチマークを一度に
lm_eval --model hf --model_args pretrained=... \
  --tasks mmlu,gpqa,hellaswag,arc_challenge --num_fewshot 5

Inspect AI との関係: 重なる。lm-eval-harness は「決まった学術ベンチマークの標準ランナー」に強く、Inspect AI は「カスタム評価・agent・multi-turn」に強い。2026年現在、両方とも生きており、モデル会社・AISI は通常両方を使う(ワークフローごとに使い分ける)。

いつ使うか:


第8章 · MLflow Evals / Arize Phoenix / DeepEval / Giskard — 運用領域の4総士

上のツールが「評価インフラ」なら、この4つは 評価と observability の境界で働く。

MLflow Evals(Databricks)

MLflow に2023年に追加された LLM 評価モジュール。ML ライフサイクルの中で「このモデル実験とあのモデル実験を比較する」流れに収まる。Databricks 顧客のデフォルトオプション。ビルトイン評価メトリクスが LLM 時代用に拡張された(mlflow.evaluate(model_type="question-answering"))。

いつ使うか: MLflow を既に使う ML チーム。ML モデルと LLM を1つのライフサイクルで管理するとき。

Arize Phoenix(オープンソース)

OpenTelemetry ベースの LLM observability + eval。trace を受け取って可視化し、その trace の上で評価を走らせる。Tracing が先、eval はその上に乗せる流れ。自己ホスト OSS と SaaS(Arize)の両方がある。

いつ使うか: production traffic を見ながら評価したいとき。RAG デバッグ(「なぜこの retrieval が間違ったのか」)。

DeepEval(Confident AI)

「pytest 風の LLM 評価」。Python ユニットテストのデコレータで LLM eval を書く。ビルトインメトリクスが豊富(GEval、AnswerRelevancy、Faithfulness、ContextualPrecision/Recall、Hallucination、ToxicityMetric、BiasMetric)。

# 疑似コード
@pytest.mark.eval
def test_answer_quality():
    metric = AnswerRelevancyMetric(threshold=0.7)
    test_case = LLMTestCase(input="...", actual_output="...")
    assert_test(test_case, [metric])

いつ使うか: pytest 流れに慣れた Python 開発者が LLM eval を書きたいとき。

Giskard(オープンソース)

ML モデル(伝統的 ML + LLM の両方)の バイアス・頑健性・ドリフト検出に強い。自動的に issue を発見する(例: 人口統計グループ別の精度差)。

いつ使うか: 規制産業(金融・ヘルスケア)。バイアス・公平性レポートが必要なとき。

4総士まとめ表:

ツール主力誰が使うか
MLflow EvalsML ライフサイクル統合Databricks 顧客
PhoenixTracing + evalRAG・agent observability チーム
DeepEvalPytest スタイルPython 開発者
Giskardバイアス・ドリフト規制産業

第9章 · ベンチマーク群 — HumanEval / MMLU / GPQA / SWE-Bench / BigCodeBench

ツールではなくデータセット。2026年現在、新モデル発表ごとに表に入る標準バッテリー。

HumanEval(OpenAI、2021)

164個の Python 関数記述問題。モデルが docstring を見て関数本体を埋める。採点は単体テスト通過の可否。「コード生成能力」の最も古いベンチマーク。2026年現在ほぼ saturated(上位モデル95%+)だが、依然として標準の1行。

MMLU(Massive Multitask Language Understanding、2021)

57の学問分野の選択式問題、約16,000問。4択。「広範な知識」の標準。2026年現在、上位モデルは90%+で、ここで差がつかなくなったので、MMLU-Pro(2024、より難しい版)や HLE(Humanity's Last Exam、2025)で補強する。

GPQA(Google-Proof Q&A、2023)

大学院レベルの科学問題 約448問。専門家でも約65%。Google 検索でも解けないように設計。「本当に難しい推論」の代表。推論モデル(o シリーズ、Claude の extended thinking)以降スコアが急上昇。

SWE-Bench / SWE-Bench Verified(Princeton、2024)

実際の GitHub issue を見て PR を作るタスク。採点は PR が本来通すべき単体テストを通すか否か。Verified は OpenAI が人手で解ける可能性・テストの正しさを検証した500問サブセット。エージェント評価の代表ベンチマーク

BigCodeBench(BigCode、2024)

HumanEval よりはるかに現実的なコード生成 — 標準ライブラリ・サードパーティライブラリ(NumPy、Pandas、etc)呼び出しが混ざる1,140問。HumanEval saturate 以降の後継。

他によく見るもの:

要点: 1つのベンチマークだけ見てはいけない。MMLU/GPQA(知識)・HumanEval/BigCodeBench/SWE-Bench(コード)・MATH(数学)・τ-bench/SWE-bench(agent) のようにバッテリーで見て、自社 use case に近いものを重く見るべき。


第10章 · AI Safety Institute — 英 / 米 / 日 / 韓 / シンガポール / 仏

2024年に英国が初の AI Safety Institute(UK AISI)を設立して以来、2025〜2026年の間に主要国の大半が同種の機関を作った。

UK AISI(2023.11 発表、2024 運営)

世界初の AISI。英国政府傘下。リリース前モデル評価(deployment 前のモデルを受け取りリスク評価)と 共同研究が中心。Inspect AI フレームワークの中核ユーザーであり事実上のスポンサー。2024〜2025年のレポートは学界の標準引用先となった。

US AISI(2024年 NIST 傘下に設立)

NIST(National Institute of Standards and Technology)内に設立。米国政府の AI 安全評価・標準策定。NIST AI Risk Management Framework(AI RMF)の運営機関の役割も兼ねる。

日本 AISI(AI Safety Institute of Japan、2024年 IPA 傘下)

IPA(情報処理推進機構)傘下。日本政府の AI 安全評価・政策助言。ガイドライン・評価方法論文書の発行。

韓国 AISI(2024年発表)

ETRI(韓国電子通信研究院)を中心に構成。政府レベルの AI 安全評価・標準化活動。KAIST・KISTI 等の学界と連携。

シンガポール AI Verify Foundation(2023)

厳密には「AISI」名ではないが同等の機関。AI Verify(評価 toolkit)と Project Moonshot(LLM red-team toolkit)を OSS で公開。

フランス AI Safety Office(Inria 傘下、2024)

Inria(フランス国立研究所)内に設置。欧州レベルでは EU AI Office と連携。

共通点:

なぜ重要か: 2026年時点で 「何が危険か」の共通語彙が AISI から出ている。CBRN(化学・生物・放射線・核)、サイバー攻撃、自律性、モデル欺瞞といったカテゴリ定義が AISI 評価レポートで標準化されつつある。


第11章 · OpenAI Preparedness Framework + Anthropic RSP

2つのモデル会社の 自社安全ポリシー文書。「どの程度のリスクならリリースするか」社内の意思決定を外部に公開した文書。

OpenAI Preparedness Framework(2023.12 発表、以降改訂)

OpenAI が自前で定義した リスクカテゴリ別の閾値:

Anthropic Responsible Scaling Policy(RSP、2023.9 発表、以降改訂)

Anthropic の同種文書。AI Safety Level(ASL) 概念:

各レベルに対応する deployment standard と security standard が定義されている。ASL-3 以上はより強い weight セキュリティ、より厳格な deployment 検証を要求される。

共通パターン

Voluntary commitments vs 法的義務: 上の2文書は両方とも会社の自発的約束。法的強制力は2025年以降 EU AI Act の GPAI(General Purpose AI)義務に一部反映され、米国はカリフォルニア州 SB 53(transparency act)等の州レベル立法が入った。


第12章 · MITRE ATLAS + OWASP LLM Top 10

産業標準の2本柱。

MITRE ATLAS(Adversarial Threat Landscape for AI Systems)

MITRE の ATT&CK(伝統的サイバー攻撃の標準分類)を AI システム攻撃用に拡張したマトリクス。2020年に初期公開、2024〜2026年に LLM/GenAI 戦術が大量追加された。

構成:

誰が使うか: セキュリティチームが「自社 AI システムに適用可能な攻撃を漏れなく検討する」チェックリストとして。red-team レポートの分類語彙。

OWASP LLM Top 10(2023 v1 → 2025 v2)

OWASP が定義した LLM アプリケーションで最も一般的な10種類のセキュリティリスク。2025 版(v2)項目:

  1. Prompt Injection
  2. Insecure Output Handling
  3. Training Data Poisoning
  4. Model Denial of Service
  5. Supply Chain Vulnerabilities
  6. Sensitive Information Disclosure
  7. Insecure Plugin/Tool Design
  8. Excessive Agency
  9. Overreliance
  10. Model Theft

なぜ重要か: アプリ開発者に最も馴染みのある語彙。「うちのアプリは OWASP LLM Top 10 に対応している」がコンプライアンスチェックリストの1行となった。

ツールとのマッピング:

ATLAS vs OWASP LLM Top 10


第13章 · 韓国 / 日本 — KAIST、KISTI、AI Safety Institute of Japan、RIKEN AIP

韓国

韓国の強み: 韓国語評価データセット(KoBest、KMMLU、韓国語 toxicity 等)と K-pop・法令・医療等の韓国特化ドメインでの安全評価。

日本

日本の強み: 日本語評価データセット(JGLUE、llm-jp-eval)、そして 敬語・丁寧表現・文化特化評価。

共通の流れ

2025〜2026年の間、韓日両方で「自国 LLM が英語モデル比で自国語・文化において安全か」を評価するデータセットが急増した。英語評価ツール(Inspect AI・lm-eval-harness)はそのまま使い、データセット層を自国語で埋めるパターン。


第14章 · 誰が何を選ぶべきか — モデルリリース / アプリ統合 / ガバナンス / 学術

最終章。ペルソナ別の推奨スタック。

A. モデル会社(frontier lab の安全・評価チーム)

B. アプリ会社(Foundation モデルを取り込むチーム)

C. ガバナンス / コンプライアンス / セキュリティチーム

D. 学界 / 研究者

組み合わせの一般原則

一行結論: 2026年の安全は1つの道具で解けない。4領域(eval・red-team・policy・standards)を自チーム規模に合わせて組み合わせるのが安全インフラの仕事である。そしてその組み合わせの出発点は 「誰が何を作り、何を解こうとしたか」を知ること — この記事がその1枚マップになることを願う。


参考 / References

コメント

まだコメントはありません。

ログインするとコメントできます